ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros5によせて
(2022年4月)
南米アンデスとの直接のつながりは、その多くが音楽での活動を通じてでしたが、ペルーやボリビアの田舎の村々を旅して、多くの人たちと出会い、感じたことは、その後の私自身のモノの見方、考え方にかなりの影響を及ぼしました。 それまで便利な都会暮らししかしてこなかった不精な私が、不便な中に魅力を見出すようになったのです。 山梨県の山の中の一軒家(標高550m)を借りました。買い物に街に出るには車で30分もかかって不便。だけど家の周りは自然でいっぱい。 水道は近くの小さな沢から引いていて、水源部分は枯葉が詰まったりするから定期的な掃除が大変。だけど一年を通して冷たくて美味しい自然の水が飲める。 山からごっそり枯葉を集めてきて腐葉土にするのは大仕事。だけど、新鮮な無農薬野菜を味わえる。 山の中での暮らしを手にして、当初は思いついたことは何でもやってみました。周辺の工事現場から伐採した大量の原木をもらってきてストーブ用の薪割り、レンガを築いて薪窯を作り仲間を呼んでピザパーティー、すぐ横を流れる川でイワナやヤマメの渓流釣り、自家製の味噌、どぶろく、チーズ作り・・・等々。 そんな中で思いついたのが陶芸でした。普通は教室とかに通って粘土に触れることから始めるらしいですが、私の場合は違っていて、まず陶芸窯を作るために、レンガやセメントを運ぶトラックを借りにレンタカー屋に走りました。大抵のことはインターネットで検索すれば出てくるので、調べまくってから行動に移しましたが、失敗してはちょこっと前進の繰り返しでした。ネットでわからないことは、陶芸家の友人たちの展覧会に押しかけ、質問攻めにして勉強しました。 器は手びねりで制作しています。始めは自分で使うための食器をつくりながら、いろいろな手法を試してみました。その中で、鉄分の多い赤い粘土の上に、化粧土、釉薬を掛けて出来る3層のハーモニーに魅了されてしまい、それ以降はいずれの作品も基本的にはすべてこの手法を用いています。 成形した粘土に化粧土を塗って800℃で素焼きし、ガラス質の釉薬を掛けて1,250℃で本焼きするのですが、化粧土を塗る際には細かい凹凸をつけ、濃い部分と薄い部分をつくります。焼きあがった作品は、その薄い部分から釉薬越しに素地の赤い粘土が見え隠れし、表情に深みをあたえてくれます。 着色には顔料は使わず、酸化銅、酸化コバルトなどの金属化合物と釉薬の焼成による美しい透明感のある発色にこだわっています。 陶板は、フィンランドのセラミックアーティスト、ルート・ブリュックの作品に感動して作り始めました。当初は彼女の真似をして、石膏で絵柄の型を作って、それに板状の粘土を押し付けることで成形していましたが、今は平らに成形した板に、筒から液体状の粘土を絞り出して(イッチンという技法)、作品ごとに描いています。 南米アンデスから導かれて始めた陶芸、気持ちの向くまま制作を続けてきました。今後、どちらの方向に自分の興味が動き、どのような作品が生まれてくるのか、制作する私自身も楽しみにしています。 木村健太郎 |